L-M BRIC News No. 6 日本語版       04-09-2003 ©
      米国ニューヨーク州イサカ市ウィンスロッププレイス5番地
      ループ操作組紐研究情報センター
      創立者・編集者 木下雅子(Masako Kinoshita)
      電話・
      Fax (607) 257-0886 E-mail mkinoshi@twcny.rr.com

      英語版第6号  参考文献  L-M技法世界分布地図

      L-M BRIC NEWS


      コペンハーゲン・ローゼンボーグ城内王立博物館コレクション中に
      見出されたL-M 組紐
      カティア・ヨーハンセン (1) 寄稿 ジョイ・ボウトルプ(2) 協力

      Billede1.jpg
      コペンハーゲン・ローゼンボーグ城内王立博物館コレクション中の17世紀のデンマーク王フレデリック三世 の衣裳の胸前のボタン掛けに用いられている組紐がループ操作法(l-m)組成であることがことがわかった。(図1)→

      ローゼンボーグ城はフレデリック三世(3) の父王クリスチャン四世 が、中世期の町中の騒音と汚臭をさけて往時のコペンハーゲンの城壁の外に建てた小さな城で美しい庭で知られる。1833年来、博物館として王室の宝石、衣 裳、絵画、家具、美術品などが公開されてきた。特に、王室衣裳コレクションは、非常に良く考証された17世紀以来の男性衣裳として他例を見ないものであ る。

      この赤い
      dressing gown は1651 年の衣裳目録に night gown として登録されている―現在の house coat のようにくつろいで着るのによさそうな衣服である。衿つきの赤い絹ベルベットに裏がつき、袖口は明るい黄緑絹ベルベットの折り返し、金糸銀糸のレ―ス、組 紐、飾り房つきのぬいぐるみボタンなどで華やかに装われている。両わきのスリットと背中中央の縫い目、及び袖の折り返しなどに沿って組紐が円形に綴じ付け られており、ガウンの縁取りは金銀のボビンレースである。世界的に見てもこれほど早期のガウンは実物は無論のことポートレート絵画の中にもほとんど見あた らない。

      組紐でボタンやボタンホール用のループを作れば、衣服の開き口を閉じるのに、高価な厚手の布や毛皮に切って穴を開けないですむ;ボタンをかけやすい;また 再生するにも都合が良いなど、融通の利く便利な解決法である。したがって、民族学的収集品のみならずヨーロッパの歴史的或は上流社会の衣類にも、l-m 組成の組紐が今後も見出されることが期待される。これまでただの「組紐」あるいは「パスメンタリー」として片付けられていた資料の中には、実は l-m 組紐であったことが明るみに出てくるかもしれない。王家の衣裳にこれら金銀の組紐が用いられたことがわかった今、「原始技法」と呼ぶことも改めたほうがよ さそうである。

      この組紐は多数の金糸と銀糸を束にした組み糸で菱形柄をだす。色柄に多少の不整が見られるのは、1束の糸が時々他の束の糸と混じって交錯しているからである。
      紐は、それぞれ巾約 1 cm、 長さは飾り房を入れて10 cm 。ガウンにはこのような紐が全部で 210 本ついている。つまり全部で 21 m の組紐が用いられたことになる。金銀糸刺繍で被われたボタンがついた紐と、ボタンをかけるために一端がループになった紐が対になっている。(図2)↓

      何年も前にl-m 技法のことを知って以来この紐の構造のことが気になっていた。糸束が互いに越し越される様相は綾織組織のように見えるが、1束が2本に別れたりまた一緒に なったりする不思議な組織相に面食らっていた。思い掛けなくノエミ・シュパイザー、木下雅子、ジョイ・ボウトルプさんたちと一堂に会し、王室収集品の組紐 について検討したことが機になって、この紐の構造が遂に確かめられ、ボウトルプさんがこれを復元する手順を考えつくに及んだ。

      Billede2.jpg 紐は長く組んだものを切ったのではなく、短い紐を1本づつ組んでいることが、ボタンホール部分が紐を構成する要素に繋がっていることからわかる。←(図2)
      この紐を組むには、必要数の糸束を 5 グループにわけ、組糸丈の中央部分から組みはじめる。まず 5 cm 程の普通の不正規組織組紐(UO 1)を組む。組んだ部分を丈の中央で折り曲げてボタンホールとし、そこで合流した両端の組糸を合わせて、金糸を 5 束、銀糸を 10 束に組み替えて平紐を組む。ここで新たに組糸を加えることはしない。

      多数の細い金銀糸を使った構造は一見不規則で、分析は非常に難しかったが、 E.シュトロンベルグの古い論文が手にはいり、急速に進捗しはじめた。この論文はシュパイザーの2冊の著書(4) にも転載されている複数組み手で組む方法を裏付けする今日知られる唯一の写真記録を載せる原論文である。
      シュトロンベルグによれば、この技法で作った粗麻糸の背嚢の肩ひもは、丈夫で撓みやすく重い背嚢を背負っても肩に食い込まないとある。組み方自身について の詳細はないが、組んだ紐の裏表の写真がついている。












      下の写真(図3)の左側は組んでいるときに上に来る面(obverse)、右は下になる面(reverse)で、ガウンには右側の面を表にして使っている)

      Billede3.jpg Billede4.jpg

      一目でこの肩ひもと金銀糸組紐の構造が非常に似ていることがわかる。(図 3-左、右)↑ 論文の組み方の概要によれば3人の組み手がそれぞれループ5本て不正規組織組紐を組むらしいが、これはこの二つの紐の特徴に一致する。要 点は隣接する2人の組み手が行うループ交換にあるらしく、糸の浮きが長くなりすぎないように、ループを捻って交換するものと見られたので、組織的に試して みたところ、下記の方法が紐の組織と合致することがわかった。

      まず一方のループを他方の中を通して交換した後に、外側になるループの下糸が上糸の前に来るように捻る。(下左図4)これはトルマッシュ技法の交換法(Speiser, Old English Pattern Book, p. 91) のバリエーションに過ぎない。

      Billede1j.gif Billede5j.jpg

      Billede2j.gif



      その結果の組織スケッチ(上右図5)と、模式図(左図6)を示す。
      図5左の中央左側の並行する2本の糸は、異なる2本のループから来ている。図5右 に見られる長い越し目がループを捻ることで短くなる。
      図5左 は 表側に捻り目がでる交換を行った場合の組織図、図5右 は 捻らないで交換した場合の組織図である.



      ←図6上図は2人の組み手間の ループを捻る交換。下図は捻らない交換を比較 図示したものである。
      左 表(obverse)側
      右 裏 (reverse)側







      一方は1630 年代の組紐、もう一方は1937 年の組紐、その間の年代の開きは何を意味するのであろうか.

      何回か復元の組み方を試みて見慣れてくると、同じような特徴を持つものが目に付くようになる。勿論写真だけでなく実物について詳細な検討が必要であるが、例えば13−4世紀の中部ヨーロッパの聖遺物の守袋についている紐が、2人組みのこの手の組紐ではないかと思われる。
      更にそれ以外に、1819 年にチュニジアからデンマークの女王に贈られた衣裳についている紐が l -m 組紐であることに私は気付いた。即ち、チュニジアににも l-m 技法があったことになる。これは王室コレクションにあったものであるが、今は国立博物館の蔵品になっている。


      本研究が妥当なものであるとすれば、この組紐は一つの大きなグループを構成する組紐の中で分析された最初のものに過ぎないことになる。この技法は長い浮き 糸がないような平組紐を生産するために広く用いられていた方法であったのではないだろうか。
      デンマークでも l-m 組紐探索の機運が高まっていることをお伝えしたい。


      参考文献:
      Strömberg, Elisabeth: "Fyrkantiga Snoddar", RIG, Stockholm 1950, p 64-69.
      Speiser, Noémi: Old English pattern books for Loop Braiding, 2000, Published by the author.
      Flamand Christensen, Sigrid.: Kongedragterne fra 17. og 18. Aarhundrede, Copenhagen 1940.
      Johansen, Katia: (about the dressing gown) "How to read Historic Textiles" i Brooks, M. ed.: Textiles Revealed, London 2000; and "Polish garments" and "In the lionユs den - on nightgowns and dressing gowns" in Lions of Fashion, male fashion of the 16th, 17th and 18th centuries, ed. Lena Rangström, The Royal Armoury, Stockholm, 2002.
      (ヨハンセン稿終り)



      青森県のループを用いる組紐技法伝承者、久米田礼子(5)さん取材の経緯

      小村眞理 寄稿


      2002年7月、縄文遺跡で知られる青森市三内丸山遺跡でボランティアガイドをしておられる天野憲子さんから(財)元興寺文化財研究所の小村に電話があっ た。「組紐製作技法のことを新聞で読んだのですが、私の知人(久米田礼子さん)もこの組み方を知っています。でも四角い紐しか組めないのですが…。」東北 にループ操作技法の伝承者がいることを知らせて頂いたのだ。「その方とお会いできますか?」興奮して尋ねた。

      天野さんは、そのちょうど一年ほど前に東北新報に載ったコラムをみて、久米田さんの技法と同じではないかと思い、いつか連絡しようと手元にずっと持ってい てくださったとのこと。記事は2001年に奈良大学で開催された文化財科学会の大会で小村、植田、井上、木沢が発表した「出土品に見られる組紐―挂甲の場 合―」について共同通信の上田氏が取材したものである。当時奈良新聞、山陽新聞、東北新報等にループを使って四畝平組紐を組んでいる手元の写真とともに掲 載された。東大寺や藤ノ木古墳など出土品の挂甲9領に、四畝平組紐が用いられており、それがループ操作技法で作られたと考えられることを説明するものだっ た。
      久米田さん(昭和3年生まれ、旧姓木下)の話しでは、青森市油川の浄満寺の延命地蔵がいつの頃からか未完成のままに置かれていたものを仕上げたという曽祖 父・木下巳八(みはち、出身地生没年不詳)が、「南」(場所不明)から持ってきた技術とのこと。家伝として伝えよとの家訓を守って、子供の頃から、祖母の ユキさん、叔母のキワさん等から組み方、糸の撚り方を教えられ、できたものは羽織の紐等として使っていた。
      久米田さんの実家の木下家では、神棚、仏壇に飾り、手首に巻いて厄払いのおまじないに、また正月のしめ飾りには紅白の組紐をつける慣習があった。またそれ らの紐がどこかにもらわれていったものだそうである。日常には羽織紐を作ることが多く、亡くなった母上の死出の衣裳の羽織には新たに組んだ白絹の紐をつけ てあげられたとのこと。永年忘れていたお正月の飾りを今年は再興された。

      kumeda.jpg 実際に紐を組んで見せていただく(図7)。5本のループを用いる。左手(中指、薬指、小指)右手(中指、薬指)に糸端をかけ、掌を上向きにして小指で糸を 操作する。まずはじめにクテ打で「中通し・開」と呼ばれる操作を数回繰り返し(2畝平組、いわゆる5つ組が2本同時に組める)、羽織に繋げる部分を作る。 そのあと「中通し・閉」を繰り返して角組を組むという方法であった。組み方はこれまで日本で採録された例と共通の特徴をもっていた。 (小村稿終)

      仏師の素養があった久米田さんの曽祖父木下巳八が「南」から持ってきた年代は19世紀後葉であろう。当時「南」で用いられていた技法ということになる。 「家伝」にせよと遺訓されたのは、「南」でも特技であったのではないだろうか。久米田さんが伝承する技法が、これまで日本で採録された技法と同じ第2法で あったことから、七十一番職人歌合絵巻、その他の江戸時代の屏風絵、絵本などに残る足打技法でもやはり第2法を使っていたのであり、更にこれを古代に遡ら せることへの根拠が一層固められた。

      久米田さんは、いやいや習わされたものがこの様な伝統ある技法と知って、今更びっくりしておられる。天野憲子さんと共に、この技法を守り伝えていくためのグループ作りも始まった。



      19世紀初葉の記録に残るエジプトのL−M技法

      ドイツ、チュービンゲン在住のバーバラ・オバーウィンクラーさんから、クリスマスカートとともに「こんな絵を見たのでお知らせします」と送ってきた。(図8)↓ 原画は現代エジプト学の嚆矢、1809年刋の「Description d'Egypte / publiee par les orderes de Nopoleon Bonaparte = エジプト描写/ナポレオン・ボナパルトの命令により出版」中の、織物、パスメンタリー、組紐、帯紐などの生産者を描写する銅版画4情景中のひとつである。本図はドイツ、ケルンのタッシェン社から 1997 年に刊行された英、独文翻訳付きの縮小再刊本中からのコピーである。
      この図がループ指操作組紐技法であることは疑いを入れず、19世紀初頭にエジプトにこの技法があったことを示すものである。組み方については、具体的には 掌向かい合わせ或は上向きの方法で、恐らくは第1法であろうと思われること以外はわからないが、ここで用いられている用具に注目しよう。

      ループ操作技法では、作る紐に必要な丈のループの全長の端を持って操作する。
      技法の最も原初的な姿が見られるのは、腕の長さ或はそれ以下の長さのループを用いて組み、両腕を左右に広げて引っ張って組織を締める方法で、あまり長い紐 は組めない。組み口を足て押して締める方法もあり、これで身長の約2分の一の長さの紐が組める。もっと長い紐を組むには絵画資料や現地報告には、1人が組 み、もう一人が打つという2人組みが多く見られる。(但しこれは、組み技法としての2人組みではない。)しかしこの方法は2人分の労力を取られから、1人 で長い紐を組むための工夫がされたことは疑いを入れない。特に現代、この技法に関心のあホビー組み手には余分の1人が得難いから、長い紐を一人で組める工 夫が要求される。

      Egyptian.jpg その要求に応える機具として、これまでに知られる打機には原理的に異なる2法がある、その一つがこのエジプトの固定打箆である。(図8)→
      図8の組み手は、ひざを折って床に座り、胸の前で腕曲げて手を向かい合わせ、床の上に置かれたちょうどその肘のあたりにくる高さの丈長の台に向かって紐を 組んでいる。台には組み手寄りの端近に7乃至9センチくらいの高さの太い釘様のものが立ち、これが打具である。台の他端には60 糎程の高さの柱が直立している。組み手は両手の親指以外の指(その全てかどうかはわからないが)にループになった糸をかけて持っている。指にかけたループ は打具から指に至るまでは扇状に広がり、打具からから先は組まれて紐になっていることがうかがわれる。この方法では、腕を引いて組み口を打具に打ち付けて 組織を緊迫する。
      Burgarian.jpg 図はループ交換を行っているところであろう。ループを交換する間もこの様に組み口を打具に宛てておくと組織が緩まない。紐に組まれた部分は、台に沿って台 他端までのび、そこで直角に折れ曲がって柱に沿って登り、柱の上端を越して反対側に垂れ下がる。垂れ下がった紐の頭には錘が着けてある。錘は紐端を安定さ せるためのみではなく、目方の加減で紐の緊密度を調節する。最低の道具建てで組み口の位置を打撃点に合わせて移動し、組織を緊迫する仕掛けができている。


      F.ソーバーさんにより報告されている現代モロッコで使われている方法、また19 世紀末ブルガリアの見聞報告にある方法はこれと同一の仕掛けである。(図9)→









      kumishi.jpg 第2の方法として日本で絵画資料などを通して古くから用いられていたことが知られる可動打箆がある。(図10)→ 
      日 本の打ち台には、最古の例は原画は1500 年とされる「七十一番職人歌合絵巻」に描かれる「へしき」があり、江戸時代の絵本、屏風絵などに見られる「足打台」がある(図10)。いずれも打ち具は刀 箆の形になっていて、下端に紐を結び着け、その紐の他端を足にくくりつけ、足を引いて箆を動かす。但しいずれの画像も組み口の位置を打撃点に合わて移動さ せる仕掛けの描写が不備で、その実態はわかっていない。19世紀初頭の大関増業編撰になる「止戈枢要」中の「秘伝糸組」には詳細な図面がついているが、や はり肝心の箇所が不備で、この図面から実際に可動する打台が作れるとは考えられない。これは秘伝であった技法の機密を守るためであったのかもしれない。足 打台を上手に作動させるには修練が必要であったらしく、大関の書には打ち方に秘伝があるとされている。

      長い紐が一人で組めないことは、現代の実技としては不備なので、そのための努力も払われている。可動打ち箆方式の機具は、能率よく使えるようにするため に、次第に部品が加わっていく傾向がある。他方、固定打ち箆方式は、原形のままで動く部分がないので作り易く、使いやすくもあるように思われる。

      ドイツ、カルルスルーエの図書館蔵書中にループ指操作技法の手順2種を含む古文書を発見

      ノエミ・シュパイザー寄稿

      最近L-M 組紐に関するドイツ語文献発見のニュースが届いた。知られる限り、ドイツからは2度目である。
      カルルスルーエのバード州立図書館の手稿図書司書、ウタ・オブホフ(Ute Obhof)博士は、 数編の15-16 世紀の手稿を綴じて革装丁にした1つのコレクションをずっと研究してきた。この手稿はドイツ南部、ババリア地方の出自と見られる(中に「イン河畔のミュル ドルフ」の名前がある)。医薬を主とする様々なトピックのなかに宗教的な詩が散見される、その中に、「紐の組み方」が入っている。
      これに好奇心を抱き更に調査を進めたいと、オブホフ博士は図書館の保存係、マグダレ―ナ・リ―ツケ(M. Liedtke)さんに意見を求た。リ―ツケさんにこの問題を相談されたテキスタイル関係の友人達は、その中に多数でてくる「ZWISCH」という見慣れ ない言葉につまずいた。中に私の講習を取ったことのあるカトリン・コハーが偶然混じっていて、彼女はこの語を全て「ループ」に置き換えれば、習ったことの ある(ループ操作)技法として完全に意味をなすことに気づいた。そのことをカルルスルーエに伝えると同時に私にその転写を送ってくれたのである。
      ニュールンベルグの手稿とは方言の相違があるが、技術的用語にも違いが見られる。(これがループ操作組紐技法であることの)重要な鍵を握るのは、次の2語である:
      1. SLAHEN(ニュールンベルグ手稿では DRINGEN ): これは「組む」を意味する。
      2. ZWISCH(ニュールンベルグ手稿では SCHLINGE): は中世語字引には「二重の」、「対の」、「叉になった」などとあり、「ループ」を意味すると考えられる。

      第1のグループは綾織組織組紐の手順である。
      個々の指を上、又は下の指という表現で呼んでいる。また上糸、下糸と言う。これは、掌を向かい合わせにして、ループが上下に並ぶ位置に構えるのだということで、人差し指で操作するA 形組み口の方法(第1法)を意味する。
      ループを(移動後に次の空き指を作るために)差し替えることには全然触れるところがないのは、一般的によく知られた技法であったからであろう。これはイギリスの本でも同様である。
      手順は綾織組織組紐で、筒状と4畝平紐の2色色柄が記載されている。
      1) 左手 濃ー濃    右手 淡ー濃ー淡   細いジグザグ横縞柄
      2) 左手 濃ー濃ー濃  右手 淡ー淡     矢羽根柄

      次のグループは全然異なるタイプの組紐である。
      掌を向かい合わせにして、まず、対角位置にある右手の上の指と左手の下の指にかけた2本のループを(一方の)中を通して交換する。それから右手の下の指と 左手の上の指にかけた2本のループを同様に交換する。
      2種類の色柄は:
      1) どちらの対でも濃と淡を交換    濃淡手綱柄
      2) 1対は濃色、もう1対は淡色    濃淡縦縞

      オブホフ博士の手稿に関する論文は "W殲zberger Medizinhistorische Mitteilungen" から出版予定。
      私は、詳しい手順の解説を "Strands" に、さらにドイツ語のジャーナル "Restauro" の次号にテキスタイル保存の専門家や図書館司書の人たちにこの技法の存在を広めるべく投稿する予定である。(シュパイザー稿終)


      フィンランドのループ指操作技法は第1法

      シュパイザーさんの手元に集まった l-m 組紐に関する記録のコピー中にフィンランドの帯紐類作製技法があった。残念ながら、これも農村の片隅に今や風前の灯火の技法としての記録である。

      U. T. シレリウスによる論文は題名も出版年がわからないが、文体から見てかなり以前の出版と思われる。
      「組み方:右手の一番下の指の糸を左手の一番上の空き指に移す。それからその手の一番下の指から右手の一番上の空き指に移す。こうして右から左に、左から 右に同じ順序で繰り返す。ただし、両手ともに、糸を移すための空き指を作るのに、糸を下方の指に移動する必要がある。」
      掌上向きにほぼ向かい合わせにしてループをもったときの「下の指」は小指であり、「上の指」は人差し指であるから、下の糸が上に移動するーーこれは「掌向 かい合わせ、外側指で操作する」技法、つまり「第1法」である。

      T. シュミットは紐の頭を取り付けるための釘、掛け釘など以外には道具がいらない指だけで組む技法には、トワイニング撚り、打ち締め、ブレイディング、THREADING(?) などがあり、2人で糸をやり取りして一緒に組む場合があることをあげている。
      その中の「打ち締め技法」は、組糸の端をループにして指に掛けている挿し絵つきで、(指に掛けた)6本の糸を1本づつ左右の指先で入れ替え、両手を横向き に広げて強く打つとあり、L-M 技法を思わせる。しかしそれ以上の組み方の解説はなく、挿し絵に見るこれまでに知られるものとは異なるループとループ配置から手順の推定はできなかった。

      フィンランドでは、紐、リボンなどの帯紐(l-m 組紐とは限らない)が婚礼に多数必要とされ、花嫁がそれを全て用意するものとされている。女性は適齢期に達するとそのための帯紐作りに精を出さねばならな い。最低限でも、挙式の牧師にお礼としてのシャツとソックス、手袋を結ぶリボンがいる。婚家先の親戚、仲人、介添人、余裕のある人は更にその他の親戚にも 帯の贈り物をする。花婿の介添人にも贈る。南部サヴォ地方では、こちらの家からあちらの家に移る時には、花嫁、花婿、介添人の馬をテープやリボンで満艦飾 し、この飾り紐は行き先でいち早く馬の鞍を外した人のものになるという習慣があるとのことである。


      L-M技法採録のしおり


      イラスト L-M 組紐技法入門シリーズ: 第6回

      入門解説
      フレデリック3世のガウンの肋骨型ボタン紐の組み方

      カルルスルーエ文書に見出された組紐の組み方


      †L-M 組紐関係出版物:
      単行本 ・ N. Speiser, Loop-manipulation Braiding:Basic Instructions, Leisester:Jennie Parry, 2002. jennie-parry@virgin(イギリス), unicorn@unicornbooks.com (アメリカ).
      URL ・Http://www.lmbric.org/njindex.html Google で loop braiding をサーチすると他にも色々のURLがみつかります。
      †BSジャパンで 2003年1月4日 に放映「古の歌人が愛した色」に!!
      茜色、露草色、萌葱色などを万葉集、古今和歌集などの歌と合わせて紹介。茜色の部分では、古代茜染の技術を復元した宮崎明子さんの技法や徳川吉宗が御嶽神 社の赤糸威の鎧をみて復元を試みたが成功しなかったとかのエピソードが紹介されたあと、宮崎さんの染めた糸を用いて櫛引八幡宮の威糸を小村真理さんが復元 しているシーンがはいる。
      †ループ操作技法関係の活動(2002年4月より2003年3月まで)
      ・制作:星野泰子 2003年2月に千疋屋ギャラリーで バスケタリー三人展にループブレイデイングの 紙ひもを組んだ立体小品を出展。
      ・講習会・実演等:The Braid Society の会員がイギリス、V & A 博物館で実演した中にループ指操作技法も。川辺千佳代 大谷短期女子大学特別講義。木下雅子 5月 マサチューセッツ州セイラム、ピーボディー・エセックス博物館でクテ打実演、7月 デンマーク国立博物館ブレデ別館でクテ打紹介の講演と実習、8月和光市理化学研究所内国際交流会館でクテ打応用技法 II、泉大津市織編館で指操作技法シリーズ2講習会、泉大津市立織編館生涯教育講座正倉院平組紐の組み方。N. シュパイザー 2003年2月講習会。角浦節子 原始機の講習会で織り上げた布の糸の始末の方法として。又子供ミュージアムに参加したボランティアの学生たち約30名に紹介。
      ・講演・研究発表など:小村真理 2002年6月6日 繊維機械学会『古墳出土刀剣にみられる組紐』(口頭発表)、2002年6月 保存修復学会『櫛引八 幡宮の鎧に用いられた組紐』(ポスター発表)、2003年3月には奈良町振興財団の企画で、講演「古来の組紐とその製作技術」。 
      †これまでに脚注にいれるのを看過した情報提供者その他(アルファベット順)の御芳名をここにまとめました。
      川辺知佳代 大谷女子短期大学非常勤講師、草木染教室主宰、2000年夏、指を使って紐を組む原初的な技法に魅せられ、これらの技法を是非伝承しなければと思い、微力ながら紹介に勤めています。西岡千鶴 1954年東京生れ。甲冑師の夫に協力して甲冑・武具の修復、復元用の組紐を製作。趣味はお茶・弓道。今年(2003) の春から、群馬県富岡市の依頼で同市指定文化財「鯰尾形兜」(桃山時代)の修復を行う予定。啄木打ちの威糸を復元するつもり。角浦節子 天然染料による染色と、日本及び世界各地に伝わる原始機とその織り技法の研究。ループ操作組紐は興味を持つ方が多いので、内容を検討して より充実したものにしてゆきたいと思っています。田中享子1996年頃アンデスの組紐講座を取って以来、クテ打、アイヌの組紐などに関心が広がった。手で組むことに重きを置いて、紐の可能性を広げていきたい。依田章子 地理学専攻 自然環境、生活様式、地域性などの関心で、毎年アジアの僻地に出かけている。少数民族をグループ分けする指標としての衣服からテキスタイル技法へ関心が広がる。
      †謝辞:寄稿いただいたJoy Boutrup、Katja Johansen、小村真理、Noemi Speiser、情報を提供していただいた、天野礼子、久米田礼子、Barbara Oberwinkler、またフィンランド語文献を翻訳して頂いたSaga Ambegaokar、献金を頂いたRichard Ahrens、Marjie Thompson、Ruth Wardの皆さん、また激励の手紙を頂いた方達に感謝します。
      *L-M BRIC News は ループ操作組紐技法の知識と理解を広ろめるため、ループ操作組紐研究情報センター創設者木下雅子の私的基金によって年1回インターネット版と印刷版を日米 両語で発行しています。印刷版は無料で配付します。御希望の方は編集者までお知らせください。但し御理解者の献金を歓迎します。
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