L-M BRIC NEWS
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特集『レース組成技法としてのループ操作技法』
L-M BRIC NEWS No. 3 が、昨 2000 年5月に発行された後、ループ操作組紐技法(l-m braiding)に関係する新資料3件が見出された。いずれもレースの組成技法であることが興味をそそる(注1)。 それまで3件の l-m によるレース組成法の存在が知られていたが、新事実3件が加わり、かつてヨーロッパでレース組成に l-m 技法が広範に用いられていた時代があったことが明らかになってきた。これまで看過されていたこの事実は、テキスタイル及びテキスタイル技術史の研究に関連 する人々にぜひ知っていてもらいたいことである。その理由から、本号を『レース組成技法としての l-m 技法』として特集することにした。 これまで知られていたループ操作によるレース組成技法 新発見の3件 シュパイザーは、ドイツとイギリスの手稿は共に「キャサリンの車輪」の手順と同じものであり、ポルトガルのコープに着いているレースは、組織の細部を観測することなしに確言はできないが、l-m 組成の可能性が高いとしている。 ハIV. DAS LINTWURM PORTLEIN= ドラゴン紐が記録されていた
lintwurm so mussen eur 3 dar zu sein vun jeliche 5 schlingen haben ein varb das zu der rechten hand stett musz das sein aus der lincken hant obers nemen und an der rechten vntten vnd musz mit zur selbe 5 mal durch bringen order 7 mal und die andern 2 nemen es pede untten vnd bringt auch jelche 5 mal durch vnd dasz zu der unten stett musz mit der lincken hant durch die obern schlingen greiffen zu dem nesten an der lincken seitten vund musz sein obere schlingen an der lincken hant durch die sein nemen (ウタ・バーグマン転写) 「指ループ」の判じ物は、商業関係のドイツ古文書集の中にリストされている手稿中に見つけた。手稿は中で何度か手が替わっている。207
ページ中始めの 115 ページは織り帯の柄出し、続いて諸病の治療薬が長ながと続き、それから鷹狩り、そして狩猟の擬餌、ソースやコンポートの調理法など。そこに突然「ドラゴン紐」が飛び出す。その後は馬とか鶏とか。
*シュパイザーは
'dringen' の語が、ドイツとスイスの国境の町コンスタンツにある13世紀 の「糸紡ぎの家」の壁画の一つで2人の娘がループ操作かと思われる仕事をしている情景についている表題中に使われていると指摘している(注10)。
この語はここで現代ドイツ語では意味をなさないが、中世ドイツ語では、組紐、篭、垣根、縄など、種々の繊維素材を使う作成作業を意味し、日本語の「編む」
にほぼ相当する。この壁画が果たしてループ操作の情景かどうかの決め手はまだでてこないが、この画中に見られる語が、新発見の15世紀ドイツのループ操作
技法の作業に用いられていることは、この絵がループ操作であるとする解釈の妥当性を一歩進めるものと言えよう。これが確証されれば、この壁画はループ操作
技法の実在を示す現存最古の絵画史料になる。
V. ドーセット侯爵夫人の蔵書から…アントニー・ルイス氏が書写せし…医薬品の本
レインカ・スウィンバーン(Layinka
N. Swinburne) は、1590 年ー1830 年間のイギリス北部の古文書 40 件余中に医薬関係処方箋を探している時に、数行の奇妙なレース組成法の記述
に気付き、著名なテキスタイル史研究者 サンティーナ・レヴィー(Santina Levy)に問い合わせた。レヴイー はこれがループ操作であることを直ちに理解し、私に回してくれた。
以 下にスローン及びキャサリンの車輪の組み方と後半が欠落しているドラゴンの組み方の邦訳を並べた。比較しやすいように同段階に当たる操作に同番号をつけ、 段階の切れ目ごとに改行した。キャサリンの車輪の組み方はイラストL-M組紐技法入門シリーズにいれた。入門シリーズに入れなかったドラゴン、スローンの 原手稿とも並べて比較して欲しい。 SLOANE 556 (British Library) f.31 The Catherine Wheel
Noémi Speiser 撮影 V & A Picture Library インターネット転写許可
2003
+1 赤色のループ5本を一人に、白色ループ5本をもう一人、緑ループ5本をもう一人に
ドラゴン紐
上
記3手順を比べると、始めの3段階は並行しており、ドラゴンには手順の後半が欠けていることがわかる。そのいずれでも、4本の2畝平組紐(蛇腹組)と1本
の4畝平組紐(重打)が一定の間隔をあけてつながる2層組織が形成され、出来上がれば2巾の左右鏡像対称オープンワーク紐になる。ただし詳細には相違があ
り、スローンは2色柄で、+3段階を2本のループを入れ替えると解釈するか(シュパイザー)、ループを2回交換すると解釈するか(木下)で2色交錯柄か縦
縞柄かの相違がある。他の2手順は3色が交錯する色柄である。また、平紐の組み方では、イギリスでは一方では「上(糸)」を取り、他方は「下(糸)」を取
るが、ドイツの手順は左右ともに上(糸)を取るということで、方式が異る(注13)。 VI. ポルトガルのコープ シュ パイザーからの私信によれば「この写真を掲載する書籍にはコープがイギリスの宗教改革後ポルトガルに渡来したらしいことと20世紀半ばに修繕されたこと以 外は記載がない。フードの縁に沿って刺繍と房縁の間に挿入されているレースはキャサリン式で、2色の色柄効果で金色のトカゲが中央軸に添って身を延ばして いるように見える。」とある。これはまさにドラゴン紐ではあるまいか? いずれも細幅レ−スである6件中、5件は原理的に同じ組み方であるが、
II のみは組成原理が全く異なる。 イラストL-M 指操作組紐技法入門シリーズ
no. 4
ループ操作組紐を記録するためのしおり
・英国のループ操作技法のみならず、現在知られる限りのループ操作によるレース組成技法も全て復元されたシュパイザーさんが、特に後者に関する研究について書いた論文を無料配布されています。御希望の方は直接No士i Speiser, Ziefenerstrasse 26 CH-4424 Arboldswil, Switzerland; 電話 & Fax(41) 61-931-2155 まで御連絡下さい。 ループ操作技法関係の活動(2000年1月より
2001年3月まで) 皆さんの、l−m技法関係の御活動をお知らせください。 謝辞
・M-L Franzen, L. N. Swinburne, U. Bargmannからは情報提供を; U. BargmannとN. Speiserには本号に寄稿を; J. SaunderとSpeiserには協力献金を頂いた;ほかお手紙を頂いた皆さんに感謝します。 L-M BRIC News
はループ操作組紐技法の知識と理解を広ろめるため、年1回発行、印刷版を無料で配付しています。御希望の方は編集者までお知らせください。但し御理解者の献金は歓迎します。
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